「音楽をより良い環境で聴きたい」
音楽好きならだれでも一度は考えたことがあるはずです。
しかし、自室に大掛かりな音楽環境を作るには手間もお金も時間もかかってしまうため、よほどの情熱がない限り、実践できずにいるという人も少なくないでしょう。
大型のスピーカーにウーハー、再生するためのプレイヤーなどなど、こだわればこだわるほど比例して苦しくなってしまいます。
仮に最高の音楽環境が整ったとしても、近所迷惑の観点から大音量で鳴らすことができず、せっかくそろえた機材も本来の力を発揮することができません。
まさに宝の持ち腐れとなってしまうわけですが、そこで気になるのは、どうしたら手軽かつ周りに迷惑をかけずに高音質の音楽が聴けるのかということですよね
その答えはいたって簡単で、ヘッドホンやイヤホンで聴けばいいだけの話なんです。
自分の耳以外に迷惑がかからず、それでいてすべての音が集約して入ってくるわけですから、これ以上ない音楽環境が簡単に手に入ります。
ただ一つ問題なのは、音楽ジャンル・音質の好みなどのユーザーニーズを追い求めすぎた各メーカーが、事細かに細分化して作りすぎたが故に、どれを選んで良いのか非常にわかりにくい環境になってしまっていることです。
実際に家電量販店などに行ってみると、思わず目を覆いたくなってしまうような、おびただしい量のヘッドホン・イヤホンが陳列されています。
この中から自分にぴったりの1本をおすすめするのは、正直言って容易ではありません。
そこで、さまざまなヘッドホンを試し、複数所持している私が「これだ!」と厳選したものを紹介していきますので、ヘッドホン選びに悩んでいるならぜひ参考にしてみてください。
幼少期から音楽に触れ続けている私が選んだヘッドホンたち
はじめにお断りさせていただきたいのが、私は耳の中にアトピーがあるため、インイヤータイプのイヤホンを使うことができません。
したがって、今から紹介するのはオーバーヘッドタイプのヘッドホンばかりです。
イヤホンを探している方にはあまりお役に立てないかもしれませんが、これを機会にヘッドホンの魅力にぜひ触れてほしいと思います。
話を戻しまして、ざっくりと、私が今まで使用してきたヘッドホンのポイントについてお伝えしていきます。
ヘッドホンの良し悪しを決めるのは音だけではない
良い音が聴きたいからヘッドホンを使用するわけであって、どうせ選ぶならやはり音にはこだわりたいところ。
私が今まで使ってきたヘッドホンは、多くの音が聞こえすぎてノイズすらも拾うものや、低音が強く濃いものなど、さまざまなタイプを所有しています。
もちろん、どれも一長一短であり、特段「これさえあればOK!」というものはありません。
ヘッドホンは音だけがすべてではなく、付け心地や耐久性、コスパなども含めて選ぶべきです。
実際に使っていて気になった点や良かった点ももれなくお伝えしていきますので、リアルな口コミをぜひお役立てください。
SONY 密閉型スタジオモニターヘッドホン MDR-CD900ST
音楽業界ではスタンダードなモデルとして非常に有名な当ヘッドホン。
一番多くのレコーディングスタジオで使われているそうです。
もとはSONYが自社スタジオで使うのを想定して作られた、言わば「業務用」です。
業界標準ということもあって、高音から低音、細かい音まではっきりと聞こえ、ノイズが入っていればそれすらも聞こえるくらい(良い意味で解像度が高い)です。
ただ、多くの音が聞こえるせいか、ホールで聴くような音の広がりがあまり感じられず、音が固まって聞こえることがあるので、リスニングには全く合わないと思いますw
価格に関しては、確かな性能のヘッドホンはこれくらいの価格なんだな、とひとつの目安にしています。
よく、MDR-CD900STは「長時間聞いていると疲れる」という意見を目にしますが、私の個人的な意見としては、3~4時間使用していても耳が疲れるようなことはなく、問題なく使えています。
長時間の使用を可能にしているのはほかにも装着感が大きく起因していて、締め付けが少し弱めのため、ヘッドホン特有の耳周りの痛みがありません。
自宅でのレコーディングにはこちらのMDR-CD900STをメインに使用しており、このヘッドホンの音を楽器本来の音としてバランスをとっています。(ここで言う“音のバランス”とは、ほかのスピーカーやイヤホンなどで聞いたときに自分が求めている聞こえ方がすることです。)
耐久性も非常に優れていて、かれこれ17年程度使っていますが、イヤーパッドを1度交換しただけで済んでいます。(ほんとうはもう1度交換しなければならないくらいボロボロですが・・・)
パーツ交換も可能で、ネットで取り寄せることができますし、交換自体も動画を参考にすれば簡単に行えます。
自宅で楽器演奏をするなら、ぜひ持っておきたいおすすめのヘッドホンです。
長々と書いておいてなんですが、これはもう一度言います。
「リスニングには(モニタリングも)向かないヘッドホンです」
SONY ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン 重低音モデル MDR-XB950N1
続いて紹介するMDR-XB950N1は、製品名にも入っているとおり、重低音を強化したヘッドホンです。
ワイヤレスが便利で、通勤時に使用していますが、ノイズキャンセリングのおかげで多少の雑踏にも負けず、とても快適に音楽を聞くことができています。
ただ、若干聞こえに遅延があるのだけが残念で、それさえなければ音楽活動でも使いたいくらいです。
音に関しては、とても「濃い」の一言に尽きます。
重低音に特化しているだけあって低音がかなり強め、それでいて高音も問題なく聞こえますし、ボーカルも聞き取りやすいので、それほど大きな不満はありません。
ただ、音響モードは音がこもったように感じるのでバランスが悪い印象です。
低音ブーストに関しても、もともと低音が強い機種のため、低音カット機能として使っています。
ライブ音源だと、かなり臨場感のある、空間の広がりが体感できる音になっているので、好きな人はかなり好きなヘッドホンだと思います。
気になる点は、少し頭への締め付け感が強く、メガネと併用していると、つるの部分が押し込まれて痛みが出るので注意が必要です。
耐久性に関しては、約2年間、毎日使用していますが今のところ問題ありません。
ただ一点だけ心配なのは、有名なソニータイマー(ソニーの商品は数年で壊れるようにタイマーが仕込まれているという都市伝説)が発動してバッテリーが駄目になってしまわないか、それだけです。
ちなみに、自分でパーツ交換はできないと思います。
注意点として、こちらのMDR-XB950N1は高価なヘッドホンに属し、コードレスの解放感をお金で買ったと納得はしていますが、高いのは間違いありません。
価格に折り合いがつくなら、迫力のあるバリバリの重低音と圧倒的な便利さから、こちらのヘッドホンがおすすめです。
audio-technica 密閉型DJヘッドホン ATH-PRO5MK3
私が一番長く使っているヘッドホン、ATH-PRO5MK3を紹介していきます。
MDR-XB950N1が現在の通勤のお供なのに対し、こちらのATH-PRO5MK3は先代にあたります。
DJ層をターゲットにしているようですが、品揃えが豊富な家電量販店でも購入は可能で、入手自体はそれほど苦労しないはずです。
気になる音に関しては、少し低音が強く感じるくらいで、ボーカルもはっきり聞こえるので普段使いにはまったく問題なく、むしろ満足のいくレベルです。
DJ用というだけあって、音をはっきり聞かせる(DJが騒がしい中でも音が聴きとれるように)という意味ではかなりの密閉感を感じる半面、音の広がりはあまり感じられません。
耐久性にも優れており、かれこれすでに10年目くらい(今は2代目)なので、どれくらい丈夫なのかがおわかりいただけるはずです。
万が一の場合のパーツ交換については、できるかどうか自体がそもそも不明ですが、おそらく買い替えた方が安いと思います。
それくらいコスパに優れており、聞きやすく丈夫なところが気に入っています。
装着感も良く、締め付けは可もなく不可もなくといったところでしょうか。
ただ、ひとつだけ不満があるとすれば、カールコードが重く、移動していると落ちてくる(これがイヤでワイヤレスに変更した)ので、ややストレスに感じるかもしれません。
VOX ヴォックス ヘッドホン アンプ・シミュレーター内蔵 amPhones BASSタイプ
こちらの機種はやや特殊なヘッドホンで、楽器練習用のアンプ内蔵型のオンイヤーです。
通常、エレキギターやエレキベースなどは、アンプを介することで音を増幅するため、ヘッドホンを直接楽器に差し込んでも音が聞こえてくることはありません。
しかし、このVOX amPhonesの場合、直接楽器に差し込むことでアンプの役割を果たすので、楽器の音を聞くことができます。
アンプをわざわざ用意する手間が省けるため、自宅やスタジオ、ライブ時の控室など、軽く練習したり、調整する際にはとても便利です。
もちろん、通常のヘッドホンとしても使用可能ですが、広がりがあまりなく、全体的にのっぺりとした起伏のない音になるので、普段使いには向いていないと思います。
ただ、のっぺり感が音源に合わせて練習する際には都合がよく、ボーカルはしっかり聞こえることもあり、良くも悪くも練習用と割り切った方が良いかもしれません。
以前4年くらい使用していた同機種が壊れ、しばらく手元になかった状態(コントラバス中心に活動していたため特になくても困らなかった)でしたが、最近買いなおしました。
このことから、耐久面が優れているかどうかと言われたらなんとも微妙なところで、私としては寿命が短かったように感じています。
価格も高めで、壊れたからといってパーツ交換ができないところも不満です。
他にも、締め付けが弱く(ずり落ちてくるほどではない)、コードが短い欠点があります。
高いのに同じ機能をもつヘッドホンがほかにないので、多少の不満はありながらも仕方がないと自分に言い聞かせて使っています。
SONY MDR-MA100 オープン型(生産完了)
密閉型しか使ったことがなかったため、オープン型を試したくて購入したのがこちらのヘッドホン。
実際に使ってみた感想としては、単純に聞き心地が良かったです。
MDR-CD900STと比べると、中高音が少し強く、低音はうなるようなところはカット、女性の声が聞き取りやすいような印象で、しかしシンバルなどの音は若干つぶれて聞こえます。
音量を7割くらいにしてクラシックを聞くと、ホールのような広がりを感じられますが、低音が足りない分、迫力に欠けるのと、高音にも限度があるため、オペラなどはやめておいた方が無難かもしれません(ファルセットが聞き苦しくなる)。
そもそも、音楽を聴くというよりも、メーカーの想定使用用途が、テレビなどをヘッドホンで聞くためのもののようで、その証拠にコードが長めです。
音の質としてもまさにテレビ向けといった感じで、結局リスニング用には至らず、現在では子供のピアノ練習用に使っています。
あまり高頻度で使っていないせいもあると思いますが、15年近く保っていて、耐久性に関しては及第点には達しているのではないでしょうか。
装着していてもまったく耳周りが痛くならず、価格も安いので、気軽に普段使いする分にはコスパの良いヘッドホンと言えます。
ただひとつ残念なのが、現在では生産が終了しており、入手がやや困難なことです。
ネットで探せばまだ見つかりますが、どこも在庫が少ないようなので、興味があれば早めに購入した方が良いでしょう。
NIAELEC 型番不明
リスニング用に購入しましたが、型番が不明です。
音のバランスが良く、MDR-CD900STに比べると音の情報量が少ない(ノイズまで検出できない)ように感じますが、まるでオーディオスピーカーで聞いているかのような、とても音が自然に聞こえるヘッドホンです。
よくありがちな、変に低音が強かったり、高音が詰まった感じもなく、ジャズやクラシックを聞くと心地よさすら感じるほど、ほんとうにヘッドホンで聞いているのか私自身が疑問に思うくらいでした。
かなりの高評価のこちらのヘッドホンですが、残念なことにロゴが読めず、メーカーがわからなかったため、6年くらいで音が出なくなった際に買い替えることができずにいました。
調べているうちにわかったのは、国内で販売していないことと、ワイヤレスしか取り扱っていないことで、非常に残念な結果となってしまいました。
装着感が驚くほど良く、それでいて軽く、そして安いと3拍子揃っていて、オープン型でなければ通勤時に使いたいくらいのフィット感があったのを覚えています(オープン型は音漏れする可能性が高い)。
ワイヤレスヘッドホンがまだなかったころ、部屋でのリスニングはこれが10割だったといっても過言ではないくらい、ほんとうにお気に入りのヘッドホンでした。
オーディオマニアが選ぶ今後欲しいヘッドホン
たくさんのヘッドホンを所有し、試してきた私ですが、まだまだ欲しいヘッドホンが数多くあります。
ここからは、その中でもとくに気になる2つのヘッドホンを紹介していきますので、興味があればチェックしてみてください。
AKG プロフェッショナルスタジオモニター・セミオープンヘッドフォン K240 Studio
モニタリング用ヘッドホンと言えばこちらのK240Studioです。
もはやド定番と言っても過言ではないくらい有名で、いろんな場面で見かけることがあると思います。
SONYと並ぶ世界標準モデルとされていて、ぜひ所有しているヘッドホンと比較してみたいです。
セミオープン型で、オープン型のような抜けの良さと装着感があるのではないかと期待しています。
もし、MDR-CD900STのような音の情報量が多いタイプだった場合、それはそれでまた別の聞こえ方がしたり、イメージがわくはずなので、別の調整ができたりして幅がさらに広がるはずです。
耐久性はイマイチわかりませんが、メジャーなヘッドホンということもあって、パーツも手に入りやすいと思うので、あまり心配はいらないと考えています。
見た目も好みで、価格も控えめ、試すにはまさにもってこいのヘッドホンではないでしょうか。
audio-technica プロフェッショナルモニターヘッドホン ATH-M50x
続いては、こちらも同じモニタリングヘッドホンとして有名なATH-M50xです。
国内というよりも、どちらかというとアメリカなどの海外のスタジオで高いシェアを誇っている機種で、多くのプロが高い信頼性をもって使用しているようです。
私は、audio-technicaのヘッドホンに対してDJ用としてのシェアが広まっているイメージをもっていて、このヘッドホンで打ち込み系の曲をモニタリングして比較してみたいと考えています。
SONYもaudio-technicaも日本の企業なのにも関わらず、このように世界標準として使われているのはうれしいですよね。
もしかしたら、その気持ちが先行しすぎて、ただ所有したいだけなのかもしれません。
レビューなどでは、耐久性に優れているとのことですが、現物を所持していないので真相は残念ながらわかりません。
パーツに関しては、ネットで調べる限り、イヤーパッドなどはわりと入手しやすいように感じます。
迷ったらe☆イヤホンで買うのがおすすめ
いざヘッドホンを購入しようと思ったら、店舗の「品数の多さ + レビュー」で選ぶのがおすすめです。
そこで真っ先に思い浮かぶのが実店舗に通うことだと思いますが、まずはネットショップをチェックした方が欲しい情報が手に入りやすいです。
たしかに、実店舗で現物を手に取って確認することはとても大切なことですが、大手家電販売員の中には専門ジャンルでないのに売れ筋だからという理由だけで押し付けてくる店員もいるので注意が必要です。
その点、ネットショップであれば実店舗以上の品ぞろえに、的確で専門的なレビューが無料で見ることができます。
中でも、私も利用している「e☆イヤホン」さんは品ぞろえも豊富で、レビューがとてもわかりやすく、かなり参考になるはずです。
自分で探すのがめんどうな人は、ぜひ利用してみてください。
ちなみに、e☆イヤホンさんでも私と同じようにMDR-CD900STを比較基準にしていましたねw
自分好みのヘッドホンを選ぶ方法
たくさんのヘッドホンを紹介してきましたが、高価なものも含まれているため、手が届かないという人もいるはずです。
いくら欲しいヘッドホンがあったとしても、オーディオマニアでもない限り、生活費を削ってまで購入しようとはおそらく考えないでしょう。
では、予算内で自分好みの良いヘッドホンに出会うためにはどうしたらよいのでしょうか。
方法はいくつかありますが、一番シンプルで間違いないのは、予算ギリギリか、もしくはほんの少しオーバーするくらいの価格帯のヘッドホンを購入することです。
すべてに当てはまるわけではありませんが、多くは「安かろうは悪かろう」であることが多く、高ければ高いほど品質が良くなる傾向にあります。
もちろん、安くても良いヘッドホンはたくさんありますが、初心者がそれを見抜くのはほぼほぼ不可能な話しです。
音質や装着感などはレビューを参考にするか、家電量販店などで実機があれば実際に試してみた方が間違いはありません。
ただ、お店で実機をチェックしたとしても、家に帰ってから聞くと「なんだか違う・・・」と感じることもよくあるので、詳細にレビューしている意見の方が参考になる場合もあります。
そして、最後にひとつだけお伝えしたいのが、理想のヘッドホンと簡単に巡り合えることはほぼないということです。
音が良くても装着感が悪い、何時間でもつけてられるけど音がのっぺりしている、など、どれも一長一短なことが多いです。
特に音に不満がある場合、結局次のヘッドホンを求めることになり、さらに価格の高いヘッドホンを選ぶという、まさに泥沼にハマってしまう人も少なくありません。
そういったリスクを少しでも減らすためには、予算を決め、前もってめぼしいものをある程度絞り込みつつ、レビューや実機をしっかり確認してから購入するようにしましょう。
むすびに
私が愛用しているヘッドホンについてお話してきました。
良いヘッドホンを1本でも持っていれば、あなたの音楽環境はがらりと変わります。
今まで聞こえてこなかった音や広がり、それが耳に直接入り込む感動と迫力は筆舌に代えがたいものがあります。
そんな幸せを、ぜひ、あなたの耳で体験してみてはいかがでしょうか。
ステキな音楽とともに幸せな日々を送れることに、ありがとうございます。
こちらで別のヘッドホンもおすすめしています。
ヘッドホンのことを詳しく知りたい方へ
※この文章は”ひろぽん”の感想をもとに「たなかたかし様」に執筆していただきました。